2015年4月~9月

  

日程

Journal Club (8:30~9:30)

Progress Report (9:30~12:00)

2015年 平成27年)

 

Group-1

Group-2

9/25(金)

  • 担当者:粟井 博丈
  • 論文:Out-of-Sequence Signal 3 Paralyzes Primary CD4+ T-Cell-Dependent Immunity
  • Gail D Sckisel , et al.
  • Immunity 43: 240-250, 2015 (August)
  • T細胞が状況に応じて適正な活性化応答と示すためには、3つのシグナル(1.TCRによる抗原認識 2.副刺激分子を介したシグナル 3.サイトカイン刺激による細胞増幅と分化シグナル)が適切なタイミングでT細胞に伝達されることが必須である。がん免疫療法などの、強力な免疫賦活を目的とした治療介入、あるいは急性感染症などはしばしば、急激なサイトカインの上昇(サイトカイン放出症候群;cytokine release syndrome)を引き起こし、また自己免疫症状を伴う非特異的なT細胞活性化が誘導される。本論文では、高容量IL-2(+抗CD40抗体)を投与する免疫療法を行った場合、CD8+T細胞の強い活性化が認められる一方、CD4+T細胞、特にナイーブCD4+T
  • 活性化が顕著に抑制される現象を報告している。この過剰なサイトカイン刺激により引き起こされるCD4+T細胞の活性化不全は、マウスおよびヒトで観察され、一般に知られる不応答性(アナジー)とは異なり、一過性に誘導される。筆者らはさらにこのCD4+T細胞の機能不全は、IL-2受容体の低発現、およびSTAT5の活性化不全を伴い、suppressor of cytokine signaling 3 (SOCS3)の発現上昇が要因の一つであることを明らかにした。そして結果的に、この過剰なサイトカイン刺激によるCD4+T細胞の機能不全は、CD8+T細胞に対する活性化補助機能、および免疫記憶応答の低下を誘導してしまうことをマウスを用いて実証している。本論文で報告された過剰なサイトカイン刺激によるCD4+T細胞の機能不全は、これまで、がんに対するサイトカイン療法として用いられてきたIL-2療法が一部の患者には奏功するものの、効果を示さない場合があることを説明する現象のひとつとなりえ、さらにサイトカイン療法の有効性を示すバイオマーカー探索の足掛かりとなる可能性を秘めている。
   
9/11(金)
  • 担当者:今村 悠哉
  • 論文:Novel Cell-Penetrating Peptide-Based Vaccine Induces Robust CD4+ and CD8+ T Cell-Mediated Antitumor Immunity
  • Madiha Derouazi, et al.
  • Cancer Research 75: 3020-3031, 2015 (August)
  • 癌免疫両方において抗原特異的なCD8T細胞やCD4T細胞を誘導するワクチン療法は有用であるとされているが、臨床試験においては十分な結果がでていないことがある。そこで今回の論文ではMHCクラスI、クラスIIにエピトープを提示させることでCD8T細胞とCD4T細胞をそれぞれ誘導できる膜透過性ペプチドを用いた新しい癌ワクチン療法の開発を行った。Z12、Z13と命名された膜透過性ペプチドにOVAペプチド、gp100ペプチドを結合させ、CD8T細胞の誘導を行ったところ、ペプチド投与群よりも有用な結果が得られた。また、OVA、LCMV-GP、gp100の蛋白をZ12又はZ13に結合させたrecombinant protein (Z12-MultiE, Z13-MultiE2)をC57/B6マウスに投与したところ、それぞれの蛋白に対し抗原特異的なCD8T細胞、CD4T細胞が誘導された。抗腫瘍効果についても、OVAまたはLCMVを発現させた腫瘍をC57/B6マウスに投与し、Z12-MultiEまたはZ13-MultiE2を投与したところ、抗腫瘍効果を認め、コントロールと比較し生存期間の延長を認めZ12、Z13deliverを用いることにより、in vivoにおいて従来のペプチド療法より有用な結果が得られた。Z12やZ13に複数の蛋白を結合させ、それぞれのエピトープに特異的なCD8、CD4T細胞の誘導ができ、腫瘍の免疫逃避に対するリスクを軽減させる可能性があり、また、T細胞誘導に蛋白を用いることからHLA型によらずすべての患者でこの治療が受けられる可能性があることが有用な点としてあげられる。
   
9/04(金)
  • 担当者:平山 真敏
  • 論文:Vaccinetion with Melanoma Helper Peptides Induces Antibody Responses Associated with Improved Overrall Survival
  • Caroline M. Reed, et al.
  • Clinical Cancer Research 21: 3879-3887, 2015 (September)
  • 筆者らは、以前よりStage IIIB, IVのmelanoma患者37名に対して、腫瘍抗原由来のCD4+ T細胞エピトープワクチン療法を施行し、その奏功を報告してきた。今回彼らは、これらワクチン患者血清中のペプチド特異的IgG抗体産生、T-cell responseと全生存率 (OS) との相関を検討している。治療プロトコールとしては、腫瘍関連抗原で、悪性黒色腫に高発現するMAGE蛋白、MART-1/MelanA, gp100,trrosinase由来の14~23merの6種類のペプチドを使用し、これらのペプチドをIFAと共に、7回ワクチンした。その結果、ワクチン中とワクチン後の血清中にペプチド特異的なIgG抗体の誘導を確認した。抗体量はワクチン終了後6週後にピークを迎え、6ヶ月後まで認められた。興味深いことに、アミノ酸の長さが長いペプチドほど特異的な抗体を誘導しやすい傾向があった。ペプチド特異的なT-cell responceが認められた患者のうち、82%で早期のペプチド特異的なIgG抗体の誘導を認めた。OSは早期の抗体産生、T-cell responceを認めた患者で有意に延長しており、両方を認めた患者ではさらに延長していた。これらの結果より、ペプチドワクチン後早期の特異的なIgG抗体とT-cell responceの誘導がOSの有意な延長に関与しており、抗体産生とT-cell responceがワクチン後の予後マーカーとして有用であることが示唆された。

 

 
8/28(金)
  • 担当者:MD Abu Sayem
  • 論文:Quiescence of Memory CR8+ T Cells is Mediated by Regulatory T cells through Inhibitory Receptor CTLA-4
  • Vandana Kalia, et al.
  • Immunity 42: 1116-1129, 2015 (June)
  • 粟井
  • 藤枝
  • 小島
  • Sayem

8/21(金)

  • 担当者:入江 厚
  • 論文:Smad2 and Smad3 Inversely Regulate TGF-β Autoinduction in Clostridium butyricum-Activated Dendritic Cells
  • Ikkou Kashiwagi, et al.
  • Immunity 43: 65-79, 2015
  • 要約:クロストリジウム種が大腸に住み着くとiTreg細胞が増える。TGFβはiTregの誘導に重要なサイトカインであるが、クロストリジウム種とTGFβの関係は不明である。著者らはグラム陽性菌であるClostridium butyricum (C. butyricum) が、粘膜固有層樹状細胞(LPDC)が産生するTGFβ1を介してiTregを誘導することを明らかにした。C. butyricumによるTGFβ1の産生の誘導は、主にTLR2に依存し、ERK-AP-1経路が重要な役割を果たす。さらにTGFβ-Smad3シグナルは、DCによる強烈なTGFβ産生に必要であったが、Smad2はTGFβ産生に対して負に作用した。Smad2欠損DCは高濃度のTGFβを産生し、大腸炎モデルマウスに対して抑制性に作用した。本研究はクロストリジウム種が誘導する、TLR2-AP-1経路とTGFβ-Smadの協調作用を介した、新規TGFβ産生機構を明らかにした。
  • 平山
  • 匂坂
  • 中根
  • 池田
  • 今村
8/7(金)
  • 担当者:梅本 覚司
  • 論文:Blocking Tumor Necrosis Factor α Enhances CD8 T-Cell-Dependent Immunity in Experimental Melanoma
  • Florie Bertrand, et al.
  • Cancer Research, 75:2619-2628, 2015(May)
  • TNFαをBlockすることでメラノーマにおけるCD8 T cell immunityを賦活することができる事を示している。TNF-αは本来1970年代に腫瘍に対して腫瘍壊死を誘導するサイトカインとして同定されたが、その一方でNF-κBを活性化させ抗アポトーシス作用を持つもとが現在知られている。本論文において、腫瘍や間質細胞から分泌されるTNF-αが、特に活性化したT細胞に作用してCD8+T細胞に細胞死を誘導することが示された。B16F10(MHC class I 発現なし)とB16K1(MHC class I を安定して発現する遺伝操作を加えたもの)をWT、TNF欠損マウス、CD8欠損マウスに同時性に皮下投与すると、B16K1においてのみWTで腫瘍増加が有意であった。よってCD8依存性の免疫により腫瘍増殖が抑制されていること、TNFαがその免疫を抑制する方向に作用していることが示唆された。WTとTNF欠損マウスにおいて腫瘍内容を調べると、TBF欠損マウスにおいてCD8/CD4比の上昇、TRP2(腫瘍抗原)抗原特異的なCD8+ T細胞の増加(MHC I デキストラマーを使用)を認めた。次に抗CD8抗体を用いて、INFα欠損マウスにおいて抗CD8抗体により腫瘍増殖の抑制効果が(WT+抗CD8抗体群程度まで)restoreされることが分かり、TNF-αがCD8+依存性の免疫反応を阻害することでメラノーマを増殖させていることを示した。また、その後の実験によりTNF-αが腫瘍内におけるHEV(高内皮静脈)の形成を阻害すること(おそらくCD8+ T細胞の流入路として機能している)が述べられ、それらの作用がhost側のTNFR1欠損で阻害される(TNFR2は無関係であった)ことから、筆者らはhost TNF/TNFR1 axisが腫瘍発育に必要であり、その系を利用してCD8+依存性の免疫反応を抑制していると推論する。脾臓からisolateしたCD8+細胞において受容体に対する解析を行い、IL-2存在下において抗CD3、抗CD28コーティングビーズでT細胞を活性化させると、わずかだがTNFR1の発現が増加する(TNFR2は著明に増加する)ことが分かり、WT、TNFR1 欠損マウス、TNFR2 欠損マウスそれぞれからisolateしたT細胞とリコンビナントTNF-αをcultureすることで、TNFR1 欠損マウス由来のT細胞のみが、著明にTNFに反応し7AAD+、Caspase3+細胞の割合が増加することから、TNF/TNFR1シグナルが、活性化したT細胞にアポトーシスを誘導する機序で腫瘍免疫を阻害する可能性を示した。さらにEtanercept(可溶性ヒトTNFR2抗体:TNFを中和)を腹腔内投与することで、腫瘍免疫は改善した。以上の結果から、TNFはnon-immunocompromizedな患者でメラノーマのHLA-Iが発現しているimmunogenicな腫瘍であれば、メラノーマにおける治療ターゲットとなりうると結論づけている。
  • 入江
  • Sayem
  • 藤枝
  • 小島
7/24(金)
  • 担当者:小島 拓
  • 論文:Eosinophilis orchestrate cancer  rejection by normalizing tumor vessels and enhancing infiltration of CD8+ T cells
  • Rafael Carretero, et al.
  • Nature Immunology 16: 609-617, 2015
  • 要約:腫瘍関連の好酸球増加は、癌でしばしば観察される。しかし、癌患者や癌のマウス・モデルでの多数の研究にもかかわらず、好酸球が腫瘍免疫の一因となるか、単なる傍観者細胞であるかどうかは確かめられていないままである。ここでは、我々は、腫瘍特異的CD8+ T細胞の存在下で活性化した好酸球は腫瘍拒絶にとって不可欠だったことを報告する。腫瘍ホーミングの好酸球は化学遊走物質を分泌し腫瘍へT細胞の遊走を誘発し、それにより腫瘍根絶と予後の延長をもたらした。活性化した好酸球はマクロファージの分極化や腫瘍血管の正常化など腫瘍微環境で大きな変化を引き起こす。そしてそれは腫瘍拒絶を促進した。したがって、我々の研究が、新たな治療戦略につながる可能性があるかもしれないという癌における好酸球の新しい概念を示す。
  • 千住
  • 池田
  • 今村
  • 平山
  • 中根
7/17(金)
  • 担当者:中根 未季
  • 論文:Allogenic IgG combined with dendritic cell stimuli induce antitumor T-cell immunity
  • Yaron Carmi, et al.
  • Nature 521: 99-104, 2015
  • 要約:がんは宿主組織内で増殖したり、免疫編集や免疫抑制により宿主免疫を回避したりするが、腫瘍の個体間での伝播はまれにしか起こらない。同種異系の腫瘍は、移植された同種異系器官を同様に、その腫瘍と宿主が同一の主要組織適合性遺伝子複合体対立遺伝子(移植片拒絶の最も強力な決定要因)を共有している場合でも、宿主のT細胞によって確実に拒絶される。腫瘍を根絶するこのような免疫が開始される仕組みは分かっていない。しかし、この過程が解明されれば、自然発生した腫瘍に対して同様の応答を誘導するための基盤が得られるかもしれない。今回筆者らは、マウスでの同種異系の主要の拒絶は、自然に生じて腫瘍と結合するIgG抗体によって開始されること、また、このようなIgG抗体により、樹状細胞(DC)が腫瘍抗原を細胞内に取り込み、それによって腫瘍反応性のT細胞を活性化できることを見出した。筆者らは、この機構を利用して自家移植腫瘍と自所性の腫瘍の治療を成功させた。同種異系IgGが結合した腫瘍細胞を取り込んで抗原を提示しているDCの全身投与、あるいはDC刺激と同種異系IgGの腫瘍内注入の併用により、T細胞が仲介する強力な抗腫瘍免疫応答が誘導され、黒色腫、膵がん、肺がんおよび乳がんのマウスモデルで腫瘍が根絶された。さらに、この方法はIgGを注入した原発性腫瘍だけでなく、遠隔腫瘍や転移腫瘍の根絶も引き起こした。この知見の臨床的妥当性を評価するために、肺がん患者に由来する抗体と細胞について調べた。このような患者由来のT細胞は、同種異系IgGを取り込んだDCと共に培養した後に、自己腫瘍抗原に活発に反応し、マウスで得られた我々の知見が再現された。これらの結果は、腫瘍に結合する同種異系IgGが強力な抗腫瘍免疫を誘導できることを明らかにしており、これはがん免疫療法に利用できると考えられる。
  • 粟井
  • 藤枝
  • 小島
  • Sayem
7/3(金)
  • 担当者:粟井 博丈
  • 論文:M-CSF from Cancer Cells Induces Fatty Acid Synthase and PPAR β/δ Activation in Tumor Myeloid Cells, Leading to Tumor Progression
  • Jonghanne Park, et al.
  • Cell Reports 10:1614-1625, 2015 (March)
  • 要約:がん微小環境において、がん細胞の増殖、代謝はその周囲に存在する細胞の代謝にも大きな影響を及ぼすことが考えられる。特にがん細胞は嫌気性解糖系により細胞増殖、生存のエネルギーを得ていると考えられる一方、がん局所において、がん細胞と相互作用する免疫担当細胞の代謝変化については、不明な点も多い。本論文で、筆者らはがん細胞と、腫瘍浸潤ミエロイド系細胞の相互作用について検討し、核内受容体型転写因子であるperoxisome-proliferator-activated receptor (PPAR)β/δの欠損ミエロイド細胞、あるいは、ミエロイド細胞の養子移入を用いた検討により、ミエロイド系細胞におけるPPARβ/δの活性は、腫瘍局所におけるIL-10依存性の血管新生、および浸潤能の増強を介して腫瘍増生を助けることが示唆された。また、筆者らの詳細なメカニズムの解析により、ミエロイド系細胞におけるPPARβ/δの活性化、およびその下流のIL-10、Arginase-I 産生は、脂肪酸合成酵素:Fatty acid synthase (FAS)の発現増強により制御されることが明らかとなった。本論文にて筆者らは、このFAS発現増強を誘導する物質として、腫瘍細胞が産生するM-CSFを候補として提案している。このことから、一つの指標となる可能性がある。そして、PPARのアンタゴニスト等を用いた、腫瘍細胞とその周囲の微小環境における代謝制御は、これからのがん種に対する新たな腫瘍抑制戦略の一つとなるかもしれない。
  • 平山
  • 匂坂
  • 中根
  • 池田
  • 今村

6/26(金)

  • 担当者:匂坂 正孝
  • 論文:CSF1/CSF1R blockade reprograms tumor-infiltrating macrophages and improves response to T-cell checkpoint immunotherapy in pancreatic cancer models
  • Zhu Y, et al.
  • Cancer Research 74:5057-5069, 2014 (September)
  • 要約:癌免疫療法では腫瘍微小環境の免疫抑制機構を緩和する戦略なくしては臨床的利益は一般に得難い。腫瘍微小環境における免疫逃避にはtumor-associated macrophageやmyeloid-derived suppressor cellの関与があり、免疫抑制を引き起こすだけでなく遠隔転移、播種をも助長し、細胞毒性療法の耐性獲得に寄与する。それゆえ、これらmyeloid cellの影響をブロックすることは治療上有益と考えられる。今回、膵管腺癌(PDAC)のマウスモデルで骨髄成長因子受容体であるCSF1Rを阻害することで、マクロファージの抗原提示能や抗腫瘍T cell反応の増強を実証した。この調査によってCSF1R阻害がT-cell checkpoint molecules(PDL1、CTLA4)の発現上昇をもたらすことも判明した。抗PD1、CTLA4抗体投与のみだとPDAC発育抑制効果は限られているが、checkpoint blockadeとCSF1R阻害の組み合わせで腫瘍発育が後退することを確認した。以上より、腫瘍微小環境における免疫抑制性骨髄細胞のリプログラミングがcheckpointに基づく免疫療法を有意に強化し得ることが示唆された。
  • 入江
  • Sayem
  • 藤枝
  • 小島
6/19(金)
  • 担当者:今村 悠哉
  • 論文: Genetic absence of PD-1 promotes accumulation of terminally differentiated exhausted CD8+ T cells
  • Pamela M. Odorizzi, et al.
  • The Journal of Experimental Medicine 212:1125-1137, 2015 (June)
  • 要約: Programmed Death-1 (PD-1)は免疫応答調節のシグナルを介する免疫レセプター:CD28/CTLA-4ファミリーに属する50~55kDaのⅠ型膜タンパク質である。PD-1は、活性化したT細胞、B細胞、ミエロイド細胞や胸腺細胞のサブセット上で発現する。PD-1のリガンドとしては、PD-1 ligand1とPD-1 ligand2があり、TCRを介する増殖やサイトカイン産生を抑制することは知られているが、今回の論文ではCD8 T細胞の制御においてPD-1の新たな役割を報告する。PD-1 KO CD8 T cellはWT CD8 Tcellと比較し、感染早期においては有意に細胞増殖をするが、慢性感染期になると逆に細胞増殖能は低下しており、サイトカイン産生(IFN-γ、TNF)については感染早期からWT CD8 T cell 比較し産生能が低下していた。また、PD-1欠損下では様々な抑制系の受容体の発現が上昇し、T cell exhaustion、細胞死が引き起こされており、PD-1は慢性感染期のCD8 T cell exhaustionを制御していることが示唆された。PD-1 signalingは感染早期のCD8 T cell の過剰な活性化、増殖の抑制、またTbethiprogenitor cell の減少を防ぐことによって、慢性感染の段階でのT細胞機能の維持やT細胞数の安定に寄与しており、permanentなPD-1欠損はかえってCD9 T cell exhaustionを引き起こすことが示され、PD-1 pathway blockade therapyなどは今後どの程度のブロックが効果的かどうか検討する必要がある。
 

 

6/12(金)
  • 担当者:平山 真敏
  • 論文:A dendritic cell vaccine increases the breadth and diversity of melanoma neoantigen-specific T cells
  • Beatriz M. Carreno, et al.
  • Science 348:803-808, 2015 (May)
  • 要約:近年がん細胞に生じた体細胞突然変異遺伝子がコードする抗原(ネオアンチゲン)に由来する変異ペプチドを用いたがんワクチン療法の実現に注目が集まっている。筆者らは、3人のStage IIIの悪性黒色腫患者に対して、手術検体を用いた全エクソンシークエンスによってネオアンチゲンを同定した。さらに、コンピューターアルゴリズムやcDNA capture assayを用いて、HLA-A2によって提示されやすいと想定される、ネオアンチゲン由来の変異ペプチド(9アミノ酸)を同定した。この論文では、これらの変異ペプチドを用いた樹状細胞療法の第1相臨床試験の中間報告を行っている。その結果、すべての患者でその安全性、忍容性が確認された。1人の患者あたり、7個の変異ペプチドを同定し、臨床試験に用いた。ワクチン後の免疫学的解析により、いずれの患者においても7個のうち3個の変異ペプチドに対して特異的なCTLが増加しており、これらの3個の変異ぺプチドの免疫原性を認めた。さらに、免疫原性のある3個の変異ペプチドのうち、1個のペプチドについてはワクチン前から特異的なCTLが体内に存在していたことが分かった。これらの変異ペプチド特異的なCTLは細胞傷害能を有し、変異ペプチドのいくつかはがん細胞によるNatural processingによりHLA-A2によって細胞表面に提示されることが分かった。さらにワクチン後のペプチド特異的なCTLのTCRをディープシークエンスで解析した結果、ワクチン投与後では投与前と比較するとペプチドに反応するTCRクローンの多様性が増加していた。これらの結果から、ネオアンチゲン由来の変異ペプチドを用いた樹状細胞療法の有用性が示唆された。
  • 休会
  • 休会
6/5(金)
  • 担当者:MD Abu Sayem
  • 論文:Mutant MHC class II epitopes drive therapeutic immune responses to cancer
  • Sebastian Kreiter, et al.
  • Nature 520:692-696, 2015(April)
  • 千住
  • 池田
  • 今村
  • 平山
  • 中根
5/22(金)
  • 担当者:藤枝 浩司
  • 論文:
  • 要約:
  • 粟井
  • 藤枝
  • 小島
  • Sayem
5/15(金)
  • 担当者:小島 拓
  • 論文:IL10 and PD-1 Cooperate to Limit the Activity of Tumor-Specific CD8+ T Cells
  • Zhaojun Sun, et al.
  • Cancer Research 75: 1635-1644, 2015
  • 要約:免疫チェックポイント阻害剤は、進行した黒色腫の治療としての大きな将来性を示します。そして、これらの薬剤の最も効果的な使用法を決定する必要性を高めています。ここでは、我々はPD-1high TA特異的なCD8+ T細胞がIL10Rの発現が上昇した進行性黒色腫患者の腫瘍周辺や腫瘍内に多く存在することを報告します。黒色腫患者からのPBMCの複数のサブセットは、IL10を産生します。IL10はIL10R+ TA特異的なCD8+ T細胞に直接作用し増殖やサバイバルを制限します。PD-1阻害は、TA-特異的なCD8+ T細胞のIL10Rの発現を増強します。それによって内因性IL10の免疫抑制効果に対する感受性を増加させます。逆に、IL10阻害は、TA-特異的CD8+ T細胞を拡大し、その機能を強化することでPD-1阻害の効果を強化しました。まとめると、我々の調査結果は、進行した黒色腫患者において、T細胞免疫抑制の反作用を強化して、TAに特異的CD8+ T細胞の活動を強化するためにIL10とPD-1の両方を妨げる事の正当性を示しました。
  • 平山
  • 匂坂
  • 中根
  • 池田
  • 今村
5/8(金)
  • 担当者:中根 未季
  • 論文:Radiation and dual checkpoint blockade activate non-redundant immune mechanisms in cancer
  • Christina Twyman-Saint victor, et al.
  • Nature 520: 373-377, 2015 (April)
  • 要約:免疫チェックポイント阻害剤は目覚ましい臨床応答をもたらすが、最善の結果を得るにはこうした阻害剤同士の組み合わせや、他の治療法との組み合わせが必要になるだろう。このことは、非重複性機構と耐性機構についての根本的な疑問につながる。本論文では、抗CTLA4抗体と放射線照射の両方の治療を受けた転移性黒色腫患者の一部で腫瘍の大幅な退縮が見られ、マウスモデルでこの効果が再現されたことを報告する。併用療法は、放射線照射を受けた腫瘍と受けていない腫瘍で治療応答を改善したが、耐性は両方に共通して見られた。マウスでの非バイアス解析によって、耐性は黒色腫細胞でのPD-L1の発現上昇によるものであり、T細胞の疲弊と関連していることが明らかになった。従って、黒色腫および他のがん種で最前の応答を得るには、放射線照射と抗CTLA4抗体、それに抗PD-L1/PD-1抗体が必要である。抗CTLA4抗体は、主に制御性T(T reg)細胞を阻害し、その結果としてT reg細胞に対するCD8 T細胞の比(CD8/T reg 比)が高くなる。放射線照射は、腫瘍内T細胞のT細胞受容体(TCR)レパートリーの多様性を広げる。これらは協働して、抗CTLA4抗体はT細胞の増殖を促進し、一方で放射線照射は増えた末梢クローンのTCRレパートリーを形作る。PD-L1阻害処理を加えるとT細胞の疲弊が防がれてCD8/T reg比の低下が軽減され、さらにオリゴクローナルなT細胞の増殖が促進される。我々の臨床試験に参加した、PD-L1レベルの高い黒色腫患者は、マウスでの結果と同じく、放射線照射と抗CTLA4抗体の組み合わせに応答せず、T細胞の疲弊が継続し、がんは急速に進行した。従って、黒色腫細胞のPD-L1は腫瘍が抗CTLA4抗体療法を回避できるように働いており、放射線照射と抗CTLA4抗体および抗PD-L1抗体を組み合わせて使えば、別々の機構を介して治療応答と免疫を促すことができる。
  • 休会
  • 休会
5/1(金)
  • 担当者:粟井 博丈
  • 論文:Akt Enhances Expansion of Potent Tumor-Specific Lymphocytes with Memory Cell Characteristics
  • Joseph G. Crompton, et al.
  • Cancer Research 75: 296-305, 2015 (January)
  • 要約:腫瘍細胞を攻撃するエフェクター細胞(CD4+、CD8+、NK、NKT、gamma delta、CAR T細胞など)をがん患者へ投与するAdoptive cell transfer (ACT)は、効果的な抗腫瘍免疫応答を惹起する免疫療法の一つとして確立されつつある。しかし、移入された細胞ががん患者の体内で維持されず、ACTの効果が限定的である場合が少ながらず見られる。この移入T細胞の維持とACTの抗腫瘍効果に相関関係があることから、移入された機能的腫瘍特異的T細胞を担癌個体内で如何に長く維持させるか、が課題となっている。一方、ウイルスの慢性感染状態においても、機能的なメモリーT細胞の形成、維持が抑制される。近年、serine/threonineキナーゼであるAktを抑制することにより、慢性感染状態において、ウイルス特異的メモリーT細胞の維持を促進できることが報告された。本論文では、担癌個体内でもAktの抑制により、腫瘍特異的CD8+T細胞が、老化(senescence)あるいは疲弊(exhaustion)することなく、長期間メモリーT細胞の維持を促進する可能性が示唆された。本論文では、Aktの特異的阻害剤をT細胞へ処理しても、活性化応答、エフェクター機能には影響せず、メモリーフェノタイプ(CD62Lhi)を示す細胞の割合が増加したことから、筆者らは、Aktの阻害による遺伝子発現プロファイルの変化を検討したところ、KLRG1、XCL,2等のsenescence/exhaustion関連遺伝子の発現低下、およびSELL、LEF1、TCF7等のメモリーT細胞関連遺伝子の発現上昇がAktの抑制により誘導されることを示した。また、Aktの抑制はT細胞の代謝に影響し、特に脂肪酸の酸化、さらにミトコンドリアの機能が促進されることを見出した。上記の結果を踏まえ、実際にがん患者由来腫瘍特異的T細胞、あるいはマウスT細胞において、in vivoでの維持に対するAktの効果を検討したところ、Akt阻害剤の処理により、in vivoでのT細胞長期生存が促進された。そして、筆者らはT細胞の長期的維持の促進により、ACTの抗腫瘍効果が大きく増強されることを実証している。本研究の結果から、Aktを介したT細胞の代謝抑制は、メモリーT細胞の形成、維持を促進するための有効な標的になりえ、Aktの抑制により、ACTの効果を増強できる可能性が示唆された。
  • 千住
  • 池田
  • 今村
  • 平山
  • 中根
4/17(金)
  • 担当者:匂坂 正孝
  • 論文:
  • 要約:
  • 4/14(火)
  • 平山
  • 匂坂
  • 中根
  • 4/14(火)
  • 池田
  • 今村
4/10(金)
  • 担当者:今村 悠哉
  • 論文:The Human Agonistic CD40 Antibody ADC-1013 Eradicates Bladder Tumors and Generates T-cell-Dependent Tumor Immunity
  • Sara M, Mangsbo. et al.
  • Clinical Cancer Research 21: 1115-1126, 2015 (March)
  • 要約:CD40はB細胞、樹状細胞(DC)やマクロファージ、その他いくつかの腫瘍で発現している。DCにおいえてCD40の刺激により活性化されるため、CD40の刺激は抗腫瘍免疫において重要である。そこでCD40アゴニスト抗体を用いた臨床試験が行われているが、強い刺激の抗体ではサイトカインストームなどの重篤な副作用が起こるため、弱い刺激の抗体を用いているのが現状である。今回の論文ではこの問題を解決するためにCD40により親和性の高いCD40アゴニスト抗体であるACD-1013を開発した。in vitroでADCC活性は既存のCD40アゴニスト抗体と同等であり、DCの活性化については既存の抗体より有意に活性化を促すことが確認された。in vitroではhuman CD40 tg miceにCD40が発現していない腫瘍細胞を皮下注し、その後ADC-1013を腫瘍周囲に局所注射したところ、既存のCD40アゴニスト抗体よりも有意に生存の延長がみられた。また、ADC-1013は既存のCD40アゴニスト抗体と比較して投与局所内にとどまっており、血清中の濃度上昇が緩やかであった。血中のCmaxは低値であるためCD40抗体療法でしばしばみられるサイトカインストームなどの副作用は殆ど認めなかったと考えられた。以上の結果よりADC-1013はCD40抗体療法の新しい抗体の一つとして期待される。
  • 休会
  • 休会
4/4(金)
  • 担当者:平山 真敏
  • 論文:T-cell-receptor-dependent signal intensity dominantly controls CD4+ T Cell polarization in vivo
  • Nicholas van Panhuys, et al.
  • Immunity 41: 63-74, 2014 (July)
  • 要約:ナイーブCD4+ T細胞の分化には周囲のサイトカイン環境、及びTCRを介したシグナル強度の強弱が重要なファクターであるという報告は数多く存在する。しかし、サイトカイン環境とシグナル強度のどちらがCD4+T細胞の分化に主要な役割を担っているかについての知見はいまだに報告がない。今回、著者らは in vivo imaging 技術を駆使して、樹状細胞に作用させる adjuvant の種類やペプチド濃度を変えて実験を行い、サイトカイン環境もしくはシグナル強度のどちらのファクターがCD4+T 細胞の分化に主要な重要な役割を果たしているかを検討している。その結果、樹状細胞に作用させるadjuvantの違いによって、樹状細胞とCD4+T cellの接触時間に違いが生じ、接触時間が長い程、CD4+T cellはTh1に分化する傾向にあることが観察された。樹状細胞と長い時間接触しているCD4+T cellでは、細胞内でのCa動態の変化を認め、CD4+T cellは樹状細胞と長い時間接触していることで、TCRを介してより強いシグナルを受け取っていることが示唆された。また、樹状細胞にパルスするペプチド濃度が高い程、抗原提示されたCD4+T cellはTh1細胞に分化する傾向にあった。このことから、シグナルの強さがTh1細胞への分化にとって最も重要であることが示唆された。さらに、adjuvantの違いによって、作用された樹状細胞の、CD80やCD86などの共刺激分子の発現に差が生じており、共刺激分子の発現が高い程、その樹状細胞と接触したCD4+T 細胞はTh1細胞に分化しやすい傾向にあることが分かった。このことから、adjuvantは、抗原提示細胞にサイトカイン産生を促しCD4+T細胞の分化方向を決定づけるだけではなく、共刺激分子を介してTCRのシグナルの強度に影響を与えることでCD4+T 細胞の分化に影響を与えている可能性が示唆された。最後に、TCRからのシグナルの強弱によって、どのサイトカインに感受性を示すかが決まり、その結果CD4+T 細胞の分化方向が決まるという仮説を立て、その仮説の検討を行った。その結果、TCRからのシグナル強度が強い程、T細胞上のIL-12Rの発現が促進され、その結果、IL-12への感受性が強くなり、CD4+T 細胞がTh1細胞に分化しやすいことが分かった。このことから、CD4+T細胞の分化において、TCRからのシグナルの強度がサイトカイン感受性の上流にあることが示唆された。
  • 千住
  • 池田
  • 今村
  • 平山
  • 中根
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