Journal Club |
2015.12.25(金) |
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2015.12.18(金) |
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2015.12.11(金) |
- 担当 匂坂 正孝
- 論文 Macrophage Blockade Using CSF1R Inhibitors Reverses the Vascular Leakage Underlying Malignant Ascites in Late-Stage Epithelial Ovarian Cancer
- Moughon DL, et al.
- Cancer Research 75: 4742-4752, 2015
- 上皮性卵巣がんの進行期において癌性腹水の合併はよく知られており、患者QOLを著しく損なうものである。癌性腹水は血管異常により引き起こされるが、近年の承認された治療法では腹水貯留を防ぐことができていない。今回、マクロファージを標的とした癌性腹水の病因である血管異常を修復する治療法について、患者検体とimmunocompetent murine model (ID8)を用いて検討した。ID8は上皮性卵巣がんのマウスモデルで、腹腔内血管の構造異常と多量腹水を認めるものである。我々は、患者腹水とID8モデル腹水中のマクロファージが血管透過性の亢進に直接的に関与していることを実証した。さらにはID8モデルにおいてマクロファージ機能をCSF1R kinase inhibitor であるGW2580投与によって阻害し、癌性腹水の病因におけるマクロファージの役割についても検証した。GW2580投与により、M2マクロファージの腹水への集積は減少し、腹水量は劇的に減少した。さらに腹腔内血管構築異常は治療群では修復され、血管内皮細胞透過性も抑えられた。以上から、マクロファージを標的とした治療により上皮性卵巣がんの癌性腹水は安全かつ効果的にコントロールし得ると考えられた。
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2015.12.04(金) |
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2015.11.27(金) |
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2015.11.20(金) |
- 担当 平山 真敏
- 論文 Metabolic Competition in the Tumor Microenvironment Is a Driver of Cancer Progression
- Chih-Hao Chang, et al.
- Cell 162: 1229-1241, 2015
- 腫瘍はその抗原性を変化させたり、腫瘍微小環境における免疫抑制メカニズムを誘導することで巧みに免疫監視機構から逃避している。腫瘍は、酸素が十分に供給されている状態でも、細胞質における嫌気性解糖が顕著に増加していること(ワールブルグ効果)が知られている。筆者らは、本研究において、腫瘍による過剰なグルコース消費が周囲のT細胞におけるmTORを介した代謝を低下させ、その結果T細胞の機能が低下することを発見した。さらに、抗CTLA-4抗体や抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体などのチェックポイント阻害抗体を担癌マウスに用いると、T細胞周囲のグルコース環境が改善され、T細胞の代謝が亢進することを発見した。また、抗PD-LA抗体を用いると、腫瘍におけるmTORシグナルが低下し解糖系が低下することが分かった。つまり、PD-L1分子は、腫瘍の代謝に関与していることが分かった。これらの結果から、腫瘍の代謝が周囲のT細胞の免疫応答の強弱に関与し、チェックポイント阻害抗体も腫瘍および周囲のT細胞の代謝に関与していることが明らかとなった。
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2015.11.13(金) |
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2015.11.06(金) |
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2015.10.30(金) |
- 担当 入江 厚
- 論文 Differential Roles for Interleukin-23 and Interleukin-17 in Intestinal Immunoregulation
- Joseph R. Maxwell, et al.
- Immunity 43: 739-750, 2015
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2015.10.23(金) |
- 担当 梅本 覚司
- 論文 Immunosuppressive and Prometastatic Functions of Myeloid-Derived Suppressive Cells Rely upon Education from Tumor-Associated B Cells
- Monica Bodogai, et al.
- Cancer Research 75: 3456-3465, 2015
- MDSCは腫瘍微小環境においてprometastaticに作用することが知られているが、本論文においてcancer -induced B cells/B regulatory cells (tBreg)が無い状態ではMDSCはexpansionするものの転移促進機能は阻害された。tBregのeducationは(少なくとも部分的に)TgfβR1/TgfβR2シグナルを介していることが示され、Educated MDSCはROS(活性酸素種)やNOをより産生する事で、効果的にCD4+やCD8+ T cellを抑制する事ができることが示された。tBregはMDSCのprometastastic function とimmunosuppressionに重要な役割を果たしている。研究結果としてまず、BALB/cマウスにおいて、4T1(マウス乳癌腫瘍)をWTとB細胞欠損マウスに投与すると有意にB細胞欠損マウスにおいて腫瘍のサイズは有意に小さく、肺転移形成focusも明らかに少なかった。またMDSCを抗体でdepletionすると、していない群と比べ転移の形成は少なくなり、逆にWT-MDSC(WTに4T1を皮下投与したマウスからMDSCのみをisolationしたものを、腫瘍を皮下投与したB細胞欠損マウスにi.v.すると、MDSC transferしていないB細胞欠損マウスを比べて転移形成が増加した。次に、腫瘍を皮下投与したWTと腫瘍を皮下投与していないナイーブマウスのそれぞれからB細胞のみをisolationしてin vitroにおいてMDSCと共培養、その後それぞれのMDSCをisolationしてT細胞と共培養することで、tBregと共培養したMDSCが、T細胞増殖抑制作用が高い事、ROSやNOの産生が多い事、またRT-PCRにおいてNOX2, iNos(=NOS2), Arg1のmRNAが有意に高く、さらにROSとNOを阻害するとT細胞の増殖抑制効果が一部阻害されることから、Educated MDSCにおいて、T細胞を抑制する機序として全てではないにせよ、ROSとNOが関与していることが示された。In vitroの実験から、直接tBregとMDSCの間にシグナル伝達が存在する事が推察され、その一部が腫瘍から分泌されるTGF-β、MDSCに存在するTGFR1/2による事が、TGF-β抗体、TGFR1 inhibitor、さらにTgfβR2 K.O.マウスによる同様のMDSC isolation、tBreg、T細胞との共培養によって検証がなされている。つまり、これらのシグナルを阻害するとMDSCの転移促進効果やT細胞の増殖抑制効果は部分的にではあるが阻害された。これらの実験を、backgroundを変えてC57BL/6とB16、OC (spontaneous ovarian cancer) で行っても同様の結果であり、さらにhumanにおいてMDA (breast cancer) とB-CLLで、T細胞とNK細胞をdepletionしたhealthy donor のPBMC(B細胞は含んだものと含まないものを作る)と、上記腫瘍のcondition mediumと共培養するとB細胞を含むPBMCではtBreg like cellができると考えられる。それからMDSCのみをisolationし human CD8+ T細胞と共培養すると、やはりB細胞を含むmediumからisolationしたMDSCが有意にT細胞の増殖抑制効果を示した。筆者らの実験でのマウスやヒトの腫瘍モデルにおいてtBregによるeducationがなければ、MDSCの免疫抑制効果や転移促進はわずかにしか起こらないことが示された。これらのB細胞は今後抗腫瘍効果を高めるために治療ターゲットにできる可能性があると結論づけている。
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2015.10.16(金) |
- 担当 藤枝 浩司
- 論文 An Excess of the Proinflammatory Cytokines IFN-g and IL-12 Impairs the Development of the Memory CD8+ T Cell Response to Chlamydia
- Zhang X Starnbach, M. N et al.
- Journal of Immunology 195:1665-1675, 2015
- Chlamydia trachomatis はアメリカでの主要な性感染症であるとともに、世界中で失明の原因となっている。Chlamydia-specific CD8+ T細胞やMHC-classI 拘束性のChlamydia 抗原を発現する viral vaccine を投与しても、その後に起こるChlamydia trachomatis の自然感染に対して、感染防御として働くCD8+ T細胞の反応はうまく惹起されない。本研究ではマウスモデルにおいて、Chlamydia trachomatis への感染の際に過剰なIL-12とIFN-γがCD8+ T細胞のメモリー形成を阻害することを示した。IL-12はCD8+ T細胞の増殖に必要であるが、effector CD8+ T細胞をTSLECへ誘導しており、またIFN-γはTEMへの進展を阻害していた。筆者らはT細胞のprimingの際に、IL-12とIFN-γを一時的にブロックすることで、TMPECを誘導し、recall protection 時に作用するmomory T細胞の数を増やすことに成功した。今後のワクチン開発に関して、IL-12とIFN-γはmomory CE8+ T細胞の形成という点で鍵となりうる。
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2015.10.09(金) |
- 担当 小島 拓
- 論文 Tuning Sensitivity of CAR to EGFR Density Limits Recognition of Normal Tissue While Maintaining Potent Antitumor Activity
- Hillary G. Caruso, et al.
- Cancer Research 75: 3505-3518, 2015
- 多くの腫瘍は、通常の組織と比較して、EGFRのような腫瘍関連抗原を過剰発現している。これは正常細胞にも有害な認識を起こす可能性があり、CARによるターゲティングを制限する。我々は、親和性の異なるモノクローナル抗体から2つのCARを生成した。それにより、異なるEGFRの発現濃度をもとに、正常細胞を悪性細胞の区別可能なCAR-T細胞を生成した。低親和性のニモツズマブ-CAR-T細胞は選択的にEGFRを高発現している細胞をターゲットにしたが、濃度が低下した分、低いエフェクター機能を示した。対照的に、高親和性のセツキシマブ-CAR-T細胞はEGFRの濃度に影響をうけなかった。要約すると、我々は親和性が低下したCARで悪性を非悪性を区別することができ、EGFRの発現レベルでT細胞活性を合わせることができるCARsの生成を解説する。
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2015.10.02(金) |
- 担当 中根 未季
- 論文 CD47 blockade triggers T cell-mediated destruction of immunogenic tumors
- Xhaojuan Liu, et al.
- Nature Medicine 21: 1209-1215, 2015
- CD47特異的遮断抗体が仲介して起こる腫瘍細胞のマクロファージ貧食は、異種移植モデルでの主要なエフェクター機能であると考えられてきた。今回筆者らは、免疫応答性マウスの同系腫瘍モデルを用いて、CD47遮断の治療効果はマクロファージに依存しておらず、樹状細胞のT細胞応答クロスプライミングに依存していることを明らかにした。抗CD47抗体療法の治療効果は、T細胞欠失マウスでは消失した。さらに、CD47遮断の抗腫瘍作用にはCD11c+細胞での細胞質DNAセンサーSTINGの発現が必要であるが、MyD88やTRIFはどちらも必要でなく、腫瘍細胞由来のDNAの細胞内感知が抗CD47治療によって増強され、さらに自然免疫応答や適応免疫応答への橋渡しがなされることを示唆した。特に、標準的な化学療法による治療開始のタイミングは、CD47遮断による抗腫瘍T細胞応答の誘導に著しく強い影響を与えた。まとめると、CD47遮断がT細胞が仲介する免疫原性腫瘍の排除を推進することを示している。
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